ご自身の脂肪だからこそ出てくる疑問
目の下の脂肪移植が選ばれる理由はシンプルです。患者様ご自身の組織を使うため、体が反応する異物がありません。その一方で、ヒアルロン酸にはない疑問もいくつか生まれます。ちゃんと定着するのか。後でダイエットしてもよいのか。どこから脂肪を採るかで違いはあるのか。定着しなかった脂肪はどうなるのか。STの執刀医はこうした質問のそれぞれに動画で答えてきました。この記事はその答えをまとめたものです。最初に一つ前提をお伝えします。STでは、目の下の脂肪移植を補助的な手術と位置づけています。膨らみと溝に対する主な修正は脂肪再配置——もともと目の下にある脂肪を、血流を保ったまま溝へ移動させること——です。移植は、再配置では埋められない部分を補うために使います。もともとある脂肪では足りない深い溝、左右の差、あるいは皮膚表面の色です。移植が適する場面と限界については、コラム「目の下のくぼみ:脂肪移植で埋めるだけでは足りない理由」もご覧ください。
移植脂肪が定着する仕組み:引っ越しにたとえると
STの執刀医は、生着(移植した脂肪が定着すること)を引っ越しにたとえて説明します。移植された脂肪細胞は、ライフラインのない新しい住所に到着したようなものです。生き残るには、新しい血管が伸びてきて栄養を届けてもらう必要があります。この過程は数日のうちに始まり、およそ1週間頃から血液の供給が届き始めますが、脂肪が完全に定着したとみなされるのは約3か月後です。その間に、定着する細胞とそうでない細胞が出てきます。移植した脂肪の一部が必ず失われること、その量に個人差があること、そして結果を最初の数週間ではなく3か月頃に判断する理由はここにあります。最初の数週間は腫れもあるため、最終的な状態よりふっくら見えます。経過の目安を整理すると次のとおりです(一般的な目安であり、個別の指示が優先されます)。最初の数日——移植した細胞は周囲の体液に頼っており、新しい血管ができ始めます。腫れのため、最終的な結果よりふっくら見えます。約1週間頃から——血液の供給が移植脂肪に届き始めます。指示に従い、圧迫やマッサージは避けてください。約3か月まで——血液の供給を受けた細胞が定着し、受けられなかった細胞は片付けられていきます。ダイエットの予定は執刀医とご相談ください。大きな減量は一般的に勧められません。約3か月以降——生き残った脂肪が定着します。結果を評価でき、必要であれば2回目の移植はここから計画します。長期的には——移植した脂肪は、体のほかの脂肪と同じようにふるまい、体重が大きく変われば一緒に変化します。
ダイエットは「前に」、定着中ではなく
引っ越しのたとえから導かれる、実際的な決まりがあります。移植した細胞が血液の供給を確立しようとしている間、細胞はごくわずかな栄養でしのいでいます。この時期の厳しいダイエットは、その余裕をさらに削り、定着できたはずの細胞の一部が失われる可能性があると考えられています。そのため、減量を考えている方には、できれば手術の前に行っていただき、移植脂肪が定着する術後約3か月までは厳しいダイエットを控えることをお勧めしています。具体的な時期は執刀医とご相談ください。2回目の移植を予定している場合は、最後の移植の後の期間にも同じことが当てはまります。定着した後の脂肪は、単にあなたの脂肪です。ダイエットをしても移植した脂肪だけが選んで減ることはありません。減量で使われるのは体全体の脂肪で、移植脂肪もほかの脂肪と同じようにふるまいます。ふだんの体重の増減で目の下の見た目が大きく変わることはほとんどありませんが、大きく太ったりやせたりすれば、移植脂肪もほかの部位の脂肪と同じ方向に変化します。
どこから脂肪を採るかで違いはありますか?
脂肪は、十分な量を確実に採れるお腹や太ももから採取するのが一般的です。目の下に必要な量はわずかで、一般的な採取部位の間で生着に意味のある差があることは、現在の知見では示されていません。たとえば「太ももの脂肪のほうがお腹の脂肪よりよく定着する」というよく聞く話は、結果を決める要因ではありません。はるかに大きく影響するのは、移植する前の処理です。油分、水分、傷んだ細胞をどれだけ丁寧に取り除き、健康で生きた組織だけを入れられるか。ご自身の脂肪なので、どの部位から採っても拒絶反応は起こりません。
目の下の移植で凹凸が起こる理由と、そのリスクを減らす方法
目の下は、体の中でも皮膚と筋肉が特に薄い部位です。通常の移植脂肪をその皮膚のすぐ下に置くと、わずかな凹凸もすべて表に出て、小さなかたまりや硬いしこりが見えたり触れたりするようになります。そのため基本の原則は控えめです。少量を、深く——筋肉の下や、より深い脂肪の層に置き、上にある組織が小さな凹凸を隠せるようにします。鋭い針ではなく、先端が丸く側面に穴の開いたカニューレを使うのが一般的で、血管や周囲の組織への損傷を減らしますが、なくせるわけではありません。皮膚の層そのものを治療する理由がある場合——皮膚が薄く色が透けている、表面に細かな凹凸がある——には、通常の脂肪は使いません。この層には、より細かく処理した脂肪(コンシーラー脂肪)を使います。粒子を小さくし、通常の移植脂肪より均一に広がるようにしたものです。表面に近い位置に置くため、深い層への移植より腫れが長く見えることがあります。どの方法でも凹凸のリスクを完全になくすことはできないからこそ、置く位置と量は控えめに決めます。コンシーラー脂肪移植については、コラム「透けて見えるクマへのコンシーラー脂肪移植:効果的な場合とそうでない場合」、しこりや凹凸については、コラム「目の下のフィラー・コラーゲン・脂肪移植後に起こりうる問題」で詳しく説明しています。
定着しなかった脂肪、定着した脂肪はどうなるか
血液の供給を確立できなかった細胞は、残骸として残るわけではありません。体の掃除役であるマクロファージという細胞が、その後の数週間で取り除いていきます。その分は、最初の数か月にかけてボリュームが少しずつ落ち着いていく形で現れます。定着した脂肪は、新しい場所で生きている組織であり、永続的なものと考えられます。変化するのは、体のほかの脂肪が変化するときと、まわりの顔が年齢を重ねるときだけです。目の下では、入れすぎより控えめな移植のほうが好まれるのもこのためです。3か月後に少し追加するほうが一般的に扱いやすく、定着してしまった余分な脂肪を取り除くのはずっと難しいからです。あらゆる施術には、凹凸、しこり、オイルシスト(脂肪が液状化してできる袋状のしこり)、左右差、移植脂肪の一部が失われて追加の移植が必要になること、脂肪を採取した部位の内出血や輪郭の変化、感染、そしてまれに、血管が詰まることで失明を含む重い合併症が起こることなどのリスクがあり、結果には個人差があります。